北利根川を遡上する大船団@鹿島神宮式年大祭【2026】

北利根川を埋め尽くす大船団!加藤洲の斎杭で目撃した、鹿島神宮「式年大祭御船祭」の圧巻

1990年秋の残像に導かれて

1990年秋、新入社員だった頃の記憶が、頭の片隅にずっと残っていました。初めてのマイカーで鰐川のあたりを通りかかった際、偶然目撃した色鮮やかな船の群れ。当時はカメラも、写ルンですしか持っておらず、シャッターチャンスを逃し、それがどのような祭りなのかも分からないままでしたが、水上を進む鮮烈な光景だけが強く印象に焼き付いていました。

あれから36年。昨年春に定年退職し、12年周期の神事がちょうど3度巡った2026年9月2日、私は「あの日の船」の正体を確かめるべく、香取市加藤洲の「斎杭(いみぐい)」へと向かったのです。マイカーは放棄し、現在の愛車は電動アシスト自転車 BESV PSF1。愛車を駆って佐原駅から、いったん利根川右岸を南下、東関道の人道橋で利根川を渡って、霞ケ浦(西浦)外浪逆浦の間の北利根川の香取市側の土手で、水上祭の船を待つことにしました。

現代のインフラと古代神事が交錯する水上パレード

現地に到着し、北利根川の川岸で待つことしばらく。東関東自動車道の利根川橋の向こうから、色鮮やかな大漁旗や五色旗を掲げた船団が姿を現します。

背景に広がるのは、鹿島臨海工業地帯のプラント群や高圧電線の鉄塔、そして巨大なコンクリートの橋梁。近代的なインフラをバックに、古式ゆかしい装飾を施した船々が進んでくる光景は、まるで現代と古代が交錯しているかのような圧倒的なインパクトです。

東関道橋梁をくぐる鹿島神宮の船団

しばらくして、川岸から水面を見渡すと、北利根川の水路を埋め尽くすように無数の供奉船が連なり、波を立てて遡上してきます。広大な湖沼群とは異なり、この限られた川幅の中に密集して進む船団の迫力と熱気に、一気に引き込まれた。

香取市側土手から見渡す鹿島神宮の遡上船団

潮来の街並みを背に進む、極彩色の「龍頭船」

やがて、船団の中心に位置する主役——鹿島神宮の御座船「つるしま1号」が眼前に迫ってきた。船首に掲げられた巨大な龍頭(りゅうとう)は極彩色に彩られ、圧倒的な存在感を放っています。

今回の主役、鹿島神宮”龍頭船”

御座船はJR鹿島線の鉄橋下をくぐり、潮来駅周辺の街並みを背景に進んでいく。沿道や橋の上からは無数の観客が見守り、水上と陸上が一体となった祭りの熱気が伝わってきます。

JR鹿島線橋梁と潮来を背景に進む御座船

加藤洲の斎杭で完成した「春と秋の一対」

船団が加藤洲の斎杭に到達し、御座船が係留されると、いよいよ神事のクライマックスを迎える。画面奥から滑り込んできたのは、香取神宮の御迎船です。

その船体を見て、ちょっと驚きました。土浦の霞ヶ浦観光で馴染み深い遊覧船「ホワイトアイリス号」でした。10年前に潮来観光に乗ったことがあります。推測になりますが、香取神宮の宮司御一行は陸路で潮来まで移動し、このホワイトアイリス号に乗船して加藤洲の斎杭へと向かったのでしょう。見慣れた船が神事の「御迎船」として仕立てられている点にも深い味わいを感じます。

左手から接近する香取神宮の御迎船と加藤洲斎杭に係留された鹿島神宮の御座船

御斎杭の横で、ホワイトアイリス号が鹿島神宮の御座船へ、安全面を配慮して大きな声でスタッフがやり取りしながら横付け(接舷)されます。

香取神宮御迎船、鹿島神宮御座船に接舷

実は今年4月15日、私は香取神宮の式年神幸祭(牛ヶ鼻)を訪れ、鳥の頭を模した「鷁首(げきす)船」と鹿島神宮の御迎船が出会う瞬間を目撃していた。 そして今、9月の加藤洲で、今度は鹿島の「龍頭船(龍)」のもとへ香取の御迎船が訪れ、香取神宮の宮司が乗り込んで祝詞を奏上する「お返し」が行われています。

春の「鳥」と、秋の「龍」。 対岸と水上を交錯させながら、両社が互いを敬い重んじる2つの神事を見届けたことで、ひとつの壮大な物語が「一対」として美しく完結しました。

記憶を超えた熱狂と余韻

36年前の曖昧な記憶の答え合わせのつもりで出かけた旅だったが、現地で体感したのは、そんな思い出を追憶のかなたに押しやるような水上祭のスケールと美しさでした。

12年に一度、北利根川を揺らす大船団と、今も息づく両神宮の絆。あの日見た記憶の残像は、生涯忘れられない鮮烈な光景へと上書きされた。次も見に行けらいいなぁ。

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